作品集

S邸の増築

■S邸の増築

15年前に新築したS様ご夫妻から増築のご依頼がありました。
リビングの前に明るく暖かいサンルームと、続きで将来寝室になり得る8畳ほどの部屋を拡張したものです。

新築の際、太さ30㎝の大黒柱に使うケヤキ材を探して山奥の材木屋を一緒に尋ね、梁に使う曲木を古ぼけた大工小屋の片隅から引っ張り出し、リビングに使うステンドグラスを西洋骨董店で探しまわった思い出があります。
私としては作業を通じてS様の求める木の良さを探ったのだと思います。
そこから設計者として陥りがちな、きれいに揃えれば良し。だけでない木の家の良さがあることを学ばせていただけた、良い経験でした。
大黒柱のある吹き抜けのリビングを中心とした家ですが、家庭的な生活像よりも、架空の別荘かホテルのラウンジのようなイメージで考えた記憶があります。
今回、15年ぶりにその家をじっくり見返すことができました。
土壁から仕上げた漆喰はまったく劣化がなく、自然光の吸収と反射がデリケートで美しく。ケヤキやチーク、ヒノキ、松といった木がそれぞれに古色を帯びて空間に響きあう様は素晴らしいと思いました。作った人たちの仕事が、その誠実さが空間に満ちているのを感じます。
そしてなにより15年間、この家を大切に住んでいるご夫妻に拍手を送りたいような気持になりました。

所在地/愛知県豊田市
竣工/2021年1月
設計監理/高橋泰樹設計室

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